Monday, November 20, 2023

カヌレ (Canelés) を綺麗に焼く6 つのポイントと典型的な失敗例


ようやく銅型で焼けるようになりました。焼き始めたのは 2019 年で、そのときはテフロン型を使って焼いていました。カヌレ (Canelés) は料理の中でもやり込み要素が多いと思います。材料は単純で、単にカスタードを型に入れて焼くだけの料理だけど難しい。いくつかのポイントを押さえることで上手に焼けるようになるので、そのポイントを解説します。


ポイント 6 点

(1) 生地の混ぜ方

(2) 冷蔵庫で寝かせる

(3) 生地は計量して流し込む

(4) 型について: テフロン vs 銅

(5) 型に塗る油の量が、仕上がりに影響する

(6) 焼く温度と時間が重要








基本の作り方


まずはうちの基本のカヌレ (Canelés) の作り方


材料


  • 牛乳 500 ml
  • 砂糖 200g
  • 卵黄 4 個
  • バター 50g
  • バニラビーンズ 1 本
  • 小麦粉 100g (all-purpose flour, 中力粉)
  • ラム酒 4 tbsp (60 ml)


  • 型に使うバター 100g くらい
  • 銅型を最初にシーズニングするために使うひまわり油 50cc くらい


準備


  1. ボウルに砂糖と卵黄を混ぜる。
  2. 牛乳にバニラビーンズを入れ、火にかける。牛乳は沸騰または、85 ℃を超えるように加熱させ、タンパク質成分を壊す。こうすることで、泡立ちにくくなり、マッシュルーム現象や断面に気泡が入りにくくなる。バターも加える。
  3. 牛乳を 65 ℃にまで冷ます。
  4. 牛乳の 1/4 (125 cc) くらいを、砂糖と卵黄のボウルに加える。泡だてないように、ゴムベラなどを使う。
  5. 小麦粉をふるいながら追加して混ぜる。
  6. 残りの牛乳を 1/4 づつ追加して混ぜる。
  7. ラム酒を混ぜる。
  8. 冷蔵庫で 24-48 時間寝かせる。最大 96 時間まで保存可能です。


焼き方

  1. オーブンを 550 °Fに予熱する。
  2. 予熱をしながら、型に溶かしたバターを流し込んで、捨てて満遍なく塗る。型は口側を下にして、余分なバターを落とし、予熱ができるまで冷凍庫に入れる。
  3. 生地を冷蔵庫から取り出し、室温に 30 分程度おく。静かに生地を泡立て器などでまぜて均一にする。30-40 RPM くらいのゆっくりした速度で撹拌する。
  4. 型を冷凍庫からとりだして、型の底の中央に鍾乳洞のように固まった余分なバターを削り取る。余分なバターが型に残っていると、その部分だけ焼き色が薄くなります。
  5. 型に同じ量の生地を流し込む。うちの型は 55g が適正でした。少なすぎると、なかに空洞ができたり、多すぎるとマッシュルーム形状になりやすい。縁から 1cm くらい (3/8’’) に液面がくるようにする。
  6. 550 °Fのオーブンで 15 分焼く。
  7. オーブンの蓋をあけないで、400 °Fに温度をさげてさらに 40 分焼く。
  8. すぐに型から取り出して、ワイヤーラックの上などで冷ます。このとき型からスムーズに外れるのも成功のポイント。


焼き時間は 60 分程度ですが、型の準備などで 90 分くらいは見た方がよいです。



よくある失敗例

(1) マッシュルーム化現象


生地を冷蔵庫で十分に寝かさないで焼き始めると、もりもり盛り上がって型の外に記事がもれてしまい、マッシュルームのようになる現象です。焼き始めは必ず盛り上がりますが、しっかり生地を寝かし、丁寧にグルテンを形成しないように混ぜると焼き上がりではしっかり型の口よりも萎んで仕上がります。

典型的なマッシュルーム:



焼き始めは必ず盛り上がりますが、しっかり萎みます。でっぱりを抑え込む必要はありませんし、焼成中はオーブンを開けるのは厳禁です。





(2) 空洞化現象 (Cavity)


写真のように中に大きな空洞ができます。


いろいろ原因はありそうでまだ 100% 確証ではないですが

  1. 生地を混ぜるときにグルテンができたり、気泡が膨らんで膨張している。
  2. 銅型からとりはずすときに、スルッと外れないのでまな板などに打ち付けて外すときに、遠心力で一方に生地が偏った。


最初は 1 かと思いましたが、2 の可能性が高いかも。要は型のシーズニングが不十分。


さらに、焼きが甘くて、中がしっかり固まり切らない前にオーブンから出しているので、中身が柔らかすぎて、ちょっとした衝撃、外力で生地が偏っているのではないかと。


銅型でもシーズニングを的確にすると、テフロン型と同じ様に、ひっくり返しただけでスルッととれます。逆に取れないと失敗かも。



(3) 火力が不十分: 焼き温度が低い、焼き時間が短い


銅型で結局失敗が多かったのは、火力か?




銅は熱伝導性能がよいので、逆に火が通りやすいと思うんですが、2022 年にいろいろ試した時は必ず 100% テフロン型よりも火の通りが悪かったです。次の写真は、テフロン (上の 4 個) と銅 (下の 5 個) で同時に焼いた結果です。


テフロンの方は、型に余分なバターが残っているせいで白くなった部分がありますが、まあまあよい出来です。


反対に、銅型は、全く同じ様に (60時間冷蔵庫で寝かした生地を、450 ℉  (225 ℃) の一定で 50 分) 焼いたのですが、焼き色が甘いです。


あと、底が白いのは、白尻現象です。僕が参考にした記事では "white butt problem" と読んでいたのでそのまま漢字にしました。 これは、焼き温度の問題よりもむしろ、型に余分なバターが固まっていて、焼きが甘くなる問題です。


この時は銅型にしっかりバターを塗って成功させようとやっきになっていて、かなり厚く厚く塗りたぐって焼いたので、逆に white butt problem を誘発しています。この場合、焼き時間を長くして色をつけて若干リカバリーできますが、あまり綺麗にはなりにくいです。


特に、型の底中央に鍾乳洞の様な固まりができやすいので、これは生地を注ぎ込む前にスプーンなどでしっかり取り除く必要があります。





綺麗に焼く5 つのポイント


(1) 生地の混ぜ方


カヌレで最初に失敗するポイントが、焼いている間に生地がどんどん盛り上がってそのままの盛り上がった形のまま焼き上がってしまう現象。通称マッシュルーム。


マッシュルームを防ぐには、冷蔵庫でしっかり寝かすことと、混ぜるときにグルテンを形成しないようにゆっくり丁寧に混ぜることです。砂糖、卵黄、小麦粉、牛乳をやさしく混ぜるのがポイント。



(2) 冷蔵庫で寝かせる: 24 ~ 96 時間


マッシュルーム現象を防ぐには、混ぜ方と生地をしっかり寝かすのが必須です。24 時間が最低限 (non-negotiable) というレシピが多いんですが、自宅でいろいろ実験したときは、12, 18 時間でもマッシュルームにならないことを確認しました。急いでいる時は半日、1 日弱でも大丈夫そうです。


逆に 72, 96 時間寝かせたときの味の変化は、正直なところまだよくわかりません。


せっかちなので 24, 48 時間で使い切ってしまいます。





(3) 生地を計量して流し込む


マッシュルームを防ぐには、型に流し込む量を正確にする必要があります。王道は口の淵から 1 cm (3/8'') に注ぐ。いろいろ試した結果、うちで使っている型は 53-55g が最適そう。


型としては小さめかもしれません。テフロン型は 64g が適量でした。




(4) 型について: テフロン vs 銅


型はテフロン加工のものと銅型を使ってきました。カヌレらしく、外側が黒く固く、中はやわらかしっとりにつくるには、テフロン型でも十分にできます。型にシーズニング(鉄パンの油ならし) は不要だし、扱い方が圧倒的に楽です。




銅型の方は、扱いは手間がかかりますが、いろいろ比較試食を重ねた結果、銅型の方が美味しく感じるという意見が多い。この試食では、どの型を使ったかは試食者の方々には伝えずに試してもらっています。



(5) 型に塗る油の量が、仕上がりに影響する


仕上がりの表面に焼き色にムラができて、焼き色がつかない部分は、バターを塗りすぎていることが考えられます。特に、カヌレてっぺんの中央が白い場合は、型の中央にバターが鍾乳洞のように固まっているまま生地を流しているかも。




銅型の場合は、新品の場合はとくにシーズニングを念入りにする必要があります。シーズニングの手順は、こうしました。

  1. 型を 400 ℉で 10 分空焼き 
  2. ひまわり油を刷毛で塗布 
  3. 逆さにして油を落とす 
  4. 400 ℉で 30 分焼く 


これを 2 回繰り返します。


焼く前にバターを抜く工程とは別に行います。一度シーズニングをすると、2 回目以降は不要です。焼き終わった後、型は洗わず布やキッチンペーパーで拭き取って保管します。


よくバターとビーズワックス (beeswax) を混ぜて塗ることがレシピにありますが、うちでは結局バターしか使っていません。フランス人のビデオでは、クッキング用のスプレー式オイルを吹き付けているのもありました。なんだか beeswax を食品に触れさせるのも抵抗があり、結局バターだけで作れてしまったので、バターだけで今後も作ろうと思います。





(6) 焼く温度と時間が重要


結局、銅型で難しかったのは焼く温度の調整だったかもです。


型や、分量が変わったら再調整が必要。


マッシュルームができないように丁寧にまぜ、型のシーズニングが完璧でも、焼く温度と時間を間違えると、綺麗な仕上がりにならかったり失敗の原因になりやすいです。


銅型にして一番失敗の原因だったかもしれないのが焼く温度と時間。実はテフロン型では 2 回目くらいでいい感じにできたのですが、銅型は100個以上失敗が続きました。


仮説として一度に 16 個を同時に焼く火力がうちのオーブンにないのではないかと思い、8 個で焼いてみたところこれが上手くいきました。





8 個にすることで、熱を吸収する要素が半分になったのがよかったようです。


また焼き時間を 


550 °F 10 分 → 380 °F 40 分


を、


550 °F 15 分 → 400 °F 40 分にしました。


一度に焼く数を少なくし、火力を上げたのが一番の解決策だったようです。


焼き時間と温度は、オーブンごとに固有の数値なので、何度も最適点を探す必要があります。


8 個 x 2 は、全部焼くのに 3 時間はかかるので、なんとか 1 回で 16 個全部やける最適点を探したいと思います。


できれば、テフロン型とあわせて 32 個同時とか。550 °F 18 分 → 400 °F 60 分 のような調整かもしれません。



まだ課題としては、断面にきめ細やかさがないというか、大きい気泡が目立つのでこれをなんとか小さくしたいなと思います。




最後にどうでもよい話: 卵は卵黄だけ使う 


カヌレをフランス語ではCannelés de Bordeaux と書き、ボルドー地方が発祥とされています。もともとは、ワイン作りであまった卵黄を使うためにあみだされたレシピなのだとか。ワインを樽につめて醸造するときに、葡萄の皮や枝などいろいろな不純物が混じります。その不純物を吸着して沈殿させるために、卵白を使います。したがって、卵黄だけが余りまくります。なので、私のレシピもこれに準って卵黄だけで作るようにしています。


残った卵白は、financier, langue de chat などにします。




参考サイト: PERFECT CANELE ← ここに成功のヒントが盛りだくさん 

https://tasteofartisan.com/canele/

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