Wednesday, March 8, 2017

アメリカ理系大学院留学への準備の体験談

 

ここで紹介するのは、大学院生として留学するための体験談です。

留学と言っても、学生として入学する他にも、語学留学、客員研究員やポスドクなどがありますが、それらは私は経験したことがないのでカバーしません。

僕が Stanford へ入学したのは、2002 年(2009 年に Ph.D. 取得) なので、特にテストなどの内容が古い場合がありますが、追ってアップデートできたらと思います。

 このポストでカバーする主な内容です:
[1] 留学のスタイル様々
[2] いつ留学するか
[3] 理系大学院への応募に必要な書類とテスト
[4] 専攻選びについて


[1] 留学のスタイル様々 


まず、「留学を希望しています!」という人たちから、よくある質問としては、

  1. 大学院へ入学する 
  2. ポスドクとして研究する 
  3. 客員研究員として滞在する 

のどれがよいか、ということです。

私には 1. しか考えられなかったので、意外ではありますが、1-3 のオプションは比較の対象にならないくらい異なります。 結局何がしたいかによるはずなのです。 

1. なら、自分が勉強したいことを本気で勉強しにくる

2. なら、既に Ph.D. を持っていてさらに研究し成果を上げたい、

3. なら、一定期間日本国外でちょっと勉強/研究しながらアメリカ生活の雰囲気を体験したい

で 1-3 に自明に決まるはずです。 

ポスドクは、Post (後の) Doctorate の略ですので、Ph.D. を取得した人たちのためのキャリアパスです。こちらはより専門的な研究者や、教授職を目指す人たちのコースです。いわゆる客員研究員 (Visiting Scholar) とは基本的に大学に滞在費用を払えば誰でも出来、本人は経歴に箔がつき、受け入れる大学としては美味しい商売です。大学側は特に成果について要求事項もありませんし、全く持って本人の責任と自由です。

個人的な見解として、本気で学ぶなら、学生またはポスドクとして留学するべきです。コミットメントのレベルや得られるものが全く違います。もしすでに博士号を取得している場合だとポスドクですね。修士号をすでに取得していて、違う専門の修士号や博士号を取得するために留学するというパターンも全く普通に行われています。

アメリカでの留学気分を味合うだけなら、客員研究員でもよいのではないでしょうか。が、どうせ留学するなら学生としてコミットをお勧めします。


[2] いつ留学するか 


いつのタイミングで留学するかですが、理系大学院、とくに修士課程では (MBA などと違って) 職務経験は特に問われませんので、学士号取得後にすぐに入学できます。アメリカ人でも、留学生でも割と少なくないパターンです。

もちろん職務経験を経た後、さらに勉強するために、企業派遣やいったん会社を辞めてから大学院へ入学するのもポピュラーです。働いた後に、自分が追求したい分野が出てきたり、さらに専門的な知識をつけてキャリアアップをしたいという人たちが多いですね。 

繰り返しになりますが、ポスドクをするなら、既に博士号を持っている必要があります。ポスト•ドクターですので。

客員研究員は、博士号なくてもできますので、いつでも(お金さえ大学に払えば席をもらえます)。 

僕自身は、学部が終わったら大学院へ進むと決めていて、「アメリカの理系大学院は特に自分で授業料を全額払わなくても卒業できる」という噂を聞いたのと、日本の大学は多かれ少なかれレジャーランドだなと感じたので、大学1年次には直ちにアメリカの大学院へ進学する目標を立てました。


 [3] 理系大学院への応募に必要な書類とテスト 


大学院の応募に必要な書類です。

  1. GPA (Grade Point Average) 
  2. Statement of Purpose 
  3. Letters of Recommendation 
  4. GRE (General Test, Subject Test) 
  5. TOEFL  


上記は一般的な Requirements ですので、各学校、学科では微妙に異なります。とくに GRE で、Subject Test が必要だったりすることがあるので要注意です。詳しくは、各学校のホームページで「Admissions」といったページを探し、「Application Requirements」といったページを探してください。15 年前に Google が今くらい発展していればどんなに資料集めが楽だったろう。。。 


合格の判定の点数配分としては、1 が 25%、2,3 で 50%、4 が 25% くらいという話をどこかの Princeton Review とかのセミナーで大昔に聞きました。 

無論数値にはばらつきはあるものの、割合信頼性の高い割合かと。 日本で受験というとテストのスコアを競うものが一般です。

アメリカでの入試 (?) は、テストは 25%で、残りは日々の勉学の活動がものをいう書類選考です。書類自体の準備は、6-12 ヶ月あれば十分ですが、そのための準備(エッセーの内容、GPA の数値) は大学入学時くらいから、始まっているといっても過言ではないでしょう。社会人経験を積んでからの場合は、職務内容も重要になります。

それぞれの Requirement の簡単な説明です: 


GPA 


Grade Point Average という学校での成績の平均値です。A = 4.0, B = 3.0, C = 2.0 と単位数をかけ、取得単位数で割ります。オール A で、4.0 になります。A+ は、4.3 になりますので、神童な人は、GPA が 4.0 を超えています。例え、GPA が 4.0 でも入学は保証されず、エッセーや推薦状の内容、学校の方針など様々な要因を基に判断が下されます。逆に、GPA があまりよくなくても、留学を諦める必要はどこにもありません。 僕はちなみに、学部の平均は 3.7 くらいだったと記憶しています。やはり、フランス語や一般教養の不出来が足を引っ張ったようです。機械工学の専門教科は、わりと 4 近くあったかと。。。


Statement of Purpose 


いわゆるエッセーと呼ばれる、大学院進学の目的を論理的に述べた作文です。非常に大事なものですので、万全の準備をしたい書類の 1 つです。 


Letters of Recommendation 


推薦状です。大学の指導教官などから、3 通用意します。通常、3 つのうち 1 つは必ず、Academic background を持つ人からもらうようにという指定があります。


GRE (General Test) 


統一テストです。Verbal, Quantitative, Analytical の 3 つのセクションから構成されるテストです。Quantitative は数学の試験でレベルとしては、数 I, II 程度です。問題さえ理解できれば満点近くとれます。Verbal はアメリカ人(ネィティブスピーカー) にとっての国語の試験です。日本人がセンター試験の国語で全員が良い点取るのはなかなか苦労するように、留学生にとっては難問すぎるテストです。そういう理由で、留学生の点数はあまり期待されていないとかいう「噂」は聞いたことがあります。逆に、GRE で良い点数を取って留学中の学費と生活費を学部から支給される特待生に認定されたという人も見たことがあります。


TOEFL 


留学生は必須です。各学校が要求する必要最低限のスコアはクリアすればよいかと。GPA、エッセー、推薦状が良くても、TOEFL で足きりされるのでがんばって取ってください。(MIT, GIT は足きりされてしまいました。。。) これまた噂ですが、合否の判定だけだと、足きりに使うのが目的とも聞いたことがあります。もちろん、入学時点で Financial Aids をゲットするためには、良い点とった方がベターです。


[4] 専攻選びについて 


アメリカで生活していくと、多かれ少なかれ数年間働きたいとか、ずっと長く住んでみたいなと思う人が多いです。

日本人は、アメリカでは、外国人(お客)という立場上、自分の国ではないわけですから、ビザの取得は必須です。たまたま生まれがアメリカだったとか、両親が昔グリーンカードをとったとかいう特殊事情以外では、F ビザ (学生ビザ) から H (就労ビザ、特殊技能労働者) を取るのが常套手段だと思っています。駐在で滞在する場合は、E, L というオプションが一般的ですが。H を取るには、理系の学問、いわゆる STEM (Science Technology Engineering Math) を専攻するのがやりやすいですね。H ビザは本来、アメリカ市民の中ではどうしてもできない高度な知識、経験、技能を要求する仕事があり、止むを得ずして優秀な外国人を雇用するためにあるものです。STEM 専攻にすると、卒業後の進路のオプションが広がります。

H ビザは、好景気の影響もあり、近年取得が大変ですが、Academic Inssitute で働く(教授や研究者など) と、H ビザも Quota や応募開始時期の制限などがなくなるんじゃなかったかな?

というわけで、アメリカで勉強して、働く経験も積みたいと思うなら、迷わず理系 (STEM 系) を専攻すべしです。


[5] おまけです 


合格 


  • Stanford University 
  • University of Michigan 
  • Perdue University
  • Rensselaer Polytechnic Institute (RPI) 


不合格(TOEFL の点数のために審査保留) 


  • Massachusetts Institute of Technology (MIT) 
  • Georgia Institute of Technology 





実際の準備のタイムライン 



  • 1998.3 東大(前期)、東工大(後期)ともに不合格。浪人したくなかったし、早く大学レベルの勉強がしたかったしで、早稲田理工学部機械工学科に入学。 (逆に東大へ入学していたら、現状に満足してアメリカへ留学しようとは思わなかったかもしれない。人間万事塞翁が馬ですな。) 
  • 1998.4 大学入学したすぐくらいに大学院留学を決意。 (途中いろいろ各大学の HPを見たり、GPA をなるべくよくするよう勉強。だが、一般教養とフランス語などなどはぎりぎりパス。) 
  • 2001.3 4 年に上がると同時くらいに本格的に資料請求や応募先を考え始める。TOEFL も 2, 3 ヶ月に 1 回受験 
  • 2001.9 MIT, Stanford, Caltech へ訪問。MIT、Stanford を訪問し、Caltech へ向かう時に 9.11 テロのため空港、高速道路封鎖。San Francisco で 1 週間程立往生になり中止。 
  • 2001.10 GRE を受験、結局 1 回受けただけ 
  • 2001.11 エッセー、推薦状を仕上げ 
  • 2001.12 応募書類をすべて提出 
  • 2002.1 University of Michigan, Perdue, RIP から合格通知。GIT, MIT は前述のように TOEFL スコアの再提出をしたらよいと促される。 
  • 2002.3 Stanford から結果が未だ来なく、問い合わせ。紛失のため再提出。 
  • 2002.5 Stanford から合格通知を受け取る。 
  • 2002.7 渡米 


いろいろな局面で運がよかったなぁと思います。応募のためのテストや文書作成の準備は大体 9 - 12 ヶ月前から始めたという感じです。


よく聞いた都市伝説



  • 有名校はテストスコアを満点(近く)とらないといけない。 
  • コネがないと入れない。
いずれもガセネタです。