Thursday, October 11, 2018

すまし汁に使う昆布と鰹節の一番出汁の取り方





美味い米と汁を作るのは日本料理の基本と思います。

特に出汁を上手にとるのはとても技術と経験が要求されるものであり、料理に合わせてどのような出汁を使うかを決めるのも面白く、又難しい点でもあります。

最近試行錯誤を重ねて、澄まし汁に使える出汁の取り方がわかってきたので、紹介します。出汁は 100 人いれば、100 通りあると言われるように、どれが正しく間違っているというものではありませんが、うちの家の技法として参考程度にご覧ください。材料の吟味よりも、どのような手順で作ればよいかという技法に重点をおいています。


様々な調査の結果、一番出汁を作るには、次のようなポイントがわかりました。 

  • 昆布のグルタミン酸は、煮出すと味が濁る。70度を超えると、アルギニン酸(ぬめり成分)が溶け出してしまう。
  • 昆布の表面は布巾でふく。
  • 昆布は水出し 10 時間がよい。
  • かつお節もぐつぐつ煮出すのは NG。85度が最もイノシン酸が抽出されやすい。
  • 温度は、温度計で正確に測りながら調理する。

これまでは次のような間違い/失敗をしていました。

  • 昆布の表面を流水で洗う。
  • 昆布を水にいれて、強火で熱し、ふつふつと沸騰するまでに煮る。
  • 昆布をお湯にいれたまま、かつお節をいれて、90-95 度くらいで 煮る。

昆布については、水出しがいいとか、60度のお湯で 60 分煮るのがよいとかいろいろ方法があり、今回は全く同じ材料で 2 種類作り、食べ比べをして、どちらが澄まし汁に適しているかを判定しました。


材料 (2 つ用意)

  • 水 1,000 ml
  • かつお節 30 g (枯節の腹側、(← 20g でも十分))
  • 真昆布 10g
  • 塩 5g
  • 醤油 小さじ1 (5 ml)
今回は昆布は普段使っていた日高昆布をやめて、真昆布にしました。日高昆布は磯の香りが強いらしく、真昆布は上品な仕上がりになるのだとか。飲み比べないとまだよくわかりません。


★追記 (11/2018): 羅臼昆布、利尻昆布を仕入れての比較

この後、羅臼、利尻昆布を仕入れて、羅臼、利尻、真、日高を一番出し比較してみました。どれも昆布は水出し10時間で、鰹は背節をけずり、85℃で 180 秒抽出しました。

① 仕上がりの綺麗さや透明度:
真昆布 > 利尻昆布 > 羅臼昆布 > 日高昆布

② 味の濃厚さでいうと:
羅臼昆布 > 利尻昆布 > 真昆布 > 日高昆布

③ 味のまとまりバランスでいうと:
利尻昆布 > 羅臼昆布 > 真昆布 > 日高昆布

ですが、甲乙つけがたいのもやまやまです。あとは料理/椀の身の種類、カツオの部位と種類、個人的の嗜好で使い分けるのではと思います。日高昆布は煮ると柔らかくなるので、出汁をとったあとにつくる佃煮や、おでんにも向いています。



準備

  • 水は、カップで正確に 1,000ml 計量する。
  • 昆布は、測りで 10g づつ計量する。表面を濡れ布巾などでふく。
  • かつお節は、出汁を火にかける前に削り、30g づつに分ける。(← 20g でも十分)



(↑は 40g あります)

方法A - 水出し

  • 真昆布を水にいれ、室温で 10 時間おく。
  • 昆布を取り出し、85 度まで熱する。
  • 85 度に達したら、火を止める。
  • かつお節をいれ、180 秒まつ。
  • 布巾で濾す。
  • 塩 5 g と醤油小さじ1で味付て完成。

方法B - 60度/60分煮出し

  • 真昆布を水にいれ、中火にかける。
  • 60度をキープしながら、60分煮出す。
  • 昆布を取り出し、85 度まで熱する。
  • 85 度に達したら、火を止める。
  • かつお節をいれ、3 分まつ。
  • 布巾で濾す。
  • 塩 5 g と醤油小さじ1で味付て完成。





濾した直後の状態
同じボウルでなくて申し訳ないのですが、透明度が明らかに異なり、水出し(A) は澄んでいます。煮出し(B)は濁っていて、底が見えません。これまで作っていた出しが濁っていたのは、昆布のせいだったのかも。

「昆布を煮出すと味が濁る」というのは、見た目にも濁るのかもしれません。



具は最小限の乾燥湯葉だけにしていただきました。
  • 水出し(A)は、味がまろやかで昆布と鰹の味と香りが調和していました。お澄ましだと、断然 (A) が自分の好みでした。
  • 煮出し(B)は、味がとんがっており、昆布と鰹が調和していない感がありました。(B) は煮物や、具の少ない味噌汁だと合うかもです。

もちろん好みがあるので、人によっては、(B) の澄ましがよいという方もあると思います。


さらに色の違いが歴然な例。全く同じおわんに注いでみて、煮出し(B)はぼやけており、水出し(A)は底の模様、特に茶色の線まで透き通っているのがよくわかります。



具と共に季節に合わせた形に野菜を切って添えると綺麗です。30-40 秒くらい下茹でしてから、盛りつけます。今回は秋らしく、紅葉、銀杏、蜻蛉がメイン。



まとめ

  • 澄まし汁、出汁の味を楽しむ料理には、昆布は水出し (10 時間) が適している
  • 温度は必ず温度計を使い、煮出し時間などはタイマーを使う。
  • かつお節は、火を止めて 85 度で 3 分間抽出する。

60 度の湯温を保つには、意外と面倒でした。水出しも 10 時間でなく、例えば 6 時間でよいのなら、手間も楽になります。


課題

  • 昆布の旨味成分の抽出方法 (水出しと時間の関係, 6~8時間程度の水出しでよいかどうか調査) 
  • 水 (硬水、軟水)による違い。アメリカでは Evian などの軟水で試してみたい。
  • 昆布の種類 (真昆布、利尻昆布、日高昆布など)
  • 鰹節(腹節、背節)、および削り方
  • 具材との組み合わせ (お麩や湯葉のような単純なもの、しんじょ等)

参考


美味い米の炊き方 (カリフォルニア米 4 合)

  1. 米を粒をつぶさないようにやさしく丁寧に洗う
  2. 土鍋に入れて、水につけ 30 分吸水
  3. 強火で 15 分たく。
  4. 極弱火で 10 分たく。
  5. 火からおろして 10 分蒸らす。土鍋の蓋の上に布巾をかぶせておく。
  6. おひつにすぐにとり、濡れ布巾を挟んで蓋をする。


出汁をとった残りの昆布は塩昆布にする


  1. 昆布の滑りをかるくとり、1.5 cm x 1.5 cm (0.5'' x 0.5'') くらいの好みの大きさに切る。
  2. 鍋に昆布をいれ、ひたひたになるくらいの醤油と、その半分の量の米酢を加えて火にかける。
  3. 60 分くらい、水分がなくなるくらいまでじわじわと煮る。洗い物などをしながら作るとちょうどよい。
  4. 弱火で蓋をすると急激に水分が減りすぎず、柔らかくなりやすい。辛いときは日本酒などで伸ばしてやる。
  5. 水分がなくなってきたら、火からおろし粗熱をとる。
  6. すり鉢ですった山椒を加えて、瓶詰めにして保存する。








Monday, October 8, 2018

なぜデータ計測をするのか

僕はデータを元に物事を判断したり、行動、分析することが多い。

だが、必ずしも 100% 数値的に物事を解釈しているわけでもありません。判断や、技術的テクニックを要する場面では、最後は人間が自然に備える直感 (intuition) や、感覚を大事にします。ゴルフのスィングでも、わずかコンマ0.秒の間に数字を考えながら、動作をするなど不可能ですし、プロでもそんなバカなことはしません。

趣味の料理、特に拙宅での代表的なとんかつや天ぷらを揚げる場合は、かならず温度を測ります。

とんかつについては、揚げる前から、揚げた後までの湯温を測り、最適な温度プロフィールを作成しています。

では、なぜ必要なのか。

技術力と経験値不足を補うために他なりません。

料理に限らず、ゴルフのスィング、野球のピッチング、ソフトウェアのプログラミング、数値の分析など、毎日繰り返し行い、絶えざる鍛錬を積み重ねてようやく習得できるのが技術と思っています。

料理は、あくまでも趣味で、職人のように毎日調理できることはなく、せいぜい月に4, 5回程度しか作りません(作れません)。

仮に毎日していることだったとして、ある日突然失敗がつづいたとする。病気をして数日休んだとする。事実や数値に基づいた正しい物を作るための基準値があれば、いつでも原因を正して、元に戻してやることが早く容易にできるのです。

「170 度の油でこんがりきつね色になるまで揚げる」というとんかつの最終工程を、月に1回という散漫な取り組みで、再現性高く、作るのは不可能。

そこを毎回再現性良く作るには、上手にできる場合、数値的にどのような状態にあったかを記録しておくのがよい。


そうすれば、客観的な事実に基づいた視点で、物理的にどのような状態を再現すればよいかがわかるのです。そこには曖昧な言葉や感覚、思い込みはなく、数字で正しく認識できます。

企業の経営判断等でも、感情や建前、過去の栄光だけでなく、数値や事実にも目を向け合理的な判断をスピーディーにできるようにしたいものです。