Wednesday, April 8, 2020

日本の非常事態宣言後の徹底的な接触減少が必要であると思う計算結果について



「欧米に近い外出制限を」 北大教授、感染者試算で提言


4月3日にこの日経新聞の記事をみて、やっぱり social distancing 大事だなぁ、と思いました。が、この図をよく見返すと、日経新聞が専門家のデータをちゃんと可視化できなかった為か、図的におかしい。接触を減らす対策を開始しても、突然数が真下に下降することは物理的にありえん。車が急に止まれないのと同じく、しかも長い潜伏期間をもつウィルス感染の場合、惰性でしばらくは増加してしまう。もっとなだらかに微分可能な連続的な曲線を描くはず。東京都は 1月24日ごろから計測が始まっていますが、4月6日の時点で 73 日が経過しており、そこまで急激に増加してないかと。

けど図が定性的に主張することは全く正しいので、記事で言われているように、現状から 80% くらいの思い切った接触減は必須。


SIR モデル

計算疫学(?)(Compartmental models in epidemiology) にある SIR モデルで、東京都の陽性患者数の推移を数値計算をしてみました (潜伏期間含まない) 。

今すぐに接触を減らす対策を実行始めても、しばらくは感染者数は増え、次第に減ってくる様子がうかがえます。

モデルからわかるのは、感染者を減らすには: 

(i) 感染拡大を減らす(他人にうつさない、キャリーしない)、

または/および、

(ii) 有効な治療手段を発見することです。

また、数値からだけで言うことですが、自宅待機などの対策も何もせず、感染者を数百万の規模まで放置、免疫が自然とつ集団免疫態となり、いずれ自然に収束します。が、あまりにも犠牲者の数が多く、地獄絵図になるので絶対に避けなければならない。

今現在でワクチンで予防とか、有効な治療方法がまだ発見されてない中、確実に有効なのは (i)しか対策がありません。

(i) については、今後 PCR 検査の利用が拡大すれば、症状が現れる前に自主的に隔離ができるなど、拡大を抑えることに繋がるはずです。


実際の陽性患者数については、東京都のデータが入手しやすいので、引き続き東京都の場合で計算しています。

[データソース]


この数値計算は、

(i) 感染率が今時点の水準の 80% 減になったら、
(ii)感染率が今時点の水準のわずかに 20% 減になったら、
(iii)感染率が今時点の水準から変わらなければ、


という条件で行いました。いまからでも遅くないので徹底的にトップダウンで断行すれば、確かに GW 明けくらいに減少に転じて、桁違いに救える生命が増えるはずです。


[参考] Compartmental models in epidemiology
https://en.wikipedia.org/wiki/Compartmental_models_in_epidemiology

[注意] SIRモデルでの感染率 β は定数となっていますが、ここでは β は S, I, R に依存しない関数 (independent) で、単に time-dependent として、4月中頃から徐々に感染率が、4月7日の水準の OO% に変わるように sigmoid 関数でモデル化しました。もっと厳密に計算するのであれば、モデルの導出し直しと、潜伏期間も考慮する必要があります。


計算結果

(i) 感染率が今時点の水準の80%減になったら、数のピークが今年5月7日に 10,448 人。ちなみに 60 - 70% 減くらいでも、(ii) や (iii) よりも 2 桁少なく、5月中旬のピーク時に 1 万人台でおさまっていました。




(ii) 感染率が今時点の水準の20%減になったら、数のピークが今年8月13日に約 185 万人。
つまり、20%減などのちょっとだけの減少だと、ピークが先延ばしになるだけで、(病院などの容量を簡単にオーバーし) 意味がない



(iii) 今時点の水準と変わらなければ、数のピークが今年7月15日に約 295 万人。これは幸いにももう起こらないと思われるシナリオですが、首相が非常事態宣言も出さず何も変えなければ、相当な数になっていたこともありえます。



ただ、4月9日の記事だとまだまだ実は不安ではあります。数日が対応が遅れたり、他人事と思っていると New York やイタリア北部のような惨事になりかねない。




3月中頃のアメリカのホワイトハウスの発表では、「100 万 - 200 万人の命を救った」と耳にしました。

当時は「(この人、またいつものように) 何を大袈裟なことを言ってんだか、0 の桁を間違えてんじゃないか。」と馬鹿にしていましたが、マジでそれは的を得ていて真実だった。


アメリカもあのまま Shelter-In-Place (SIP, 自宅待機令) を早期に実行していなければ、今よりももっと酷い状況だったのは間違いなく、感染者も2 桁は増えていたかもしれません。




No comments: